- 1. 株価と不動産との関係
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鑑定士はお金持ちが少ないので株の売買とは縁遠いものですが、株価全体の動きは大変気になります。と言うのも、不動産の価格は株価と密接な関係があります。お金を持って運用を考える人は株を買おうか・預金をしようか・不動産を買おうかと迷うからです。株はハイリスク・ハイリターン、預金はローリスク・ローリターン、不動産は?
私達一般市民は株・預金・保険ぐらいにお金を回すのが精一杯。 不動産なんて住宅があれば十分。リスクやリターンなんてどうでも良い。その通りです。でもお金持ちは違う様です。
不動産どころか石油・金・木材・食料 等なんでも売買します。
皆さん、人が100億円の資産を持つとどんな気持になるかわかりますか。私も聞いた話ですが、200億・300億に増やしたいと言う気持が真先に来るそうです。
残念ながら不動産の価格もお金持ちの気持次第なのです。
日経平均株価が7千円台の頃、お金持ちは株で損をした人が多く、萎縮しておりましたが、少し様子が変って来た様です。
株価は日本経済・世界経済の先取りをして動きます。不動産と言う「木」を観察するには経済と言う「森」も同時に見なければならず、全く「一寸先は闇」です。
- 2. 「評価」と価格との関係
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評価は井戸端会議的には楽しいものですが、人間の評価は深刻な問題を惹起しますネ。学校での評価・職場での評価は人生に影響する場合もあります。正しい評価は可能でしょうか?フィギィアスケートでの評価も美人コンテストでの評価も評価自体が評価される局面が多いものです。
「評価」は「判断」とどう違うのでしょうか。
AさんよりBさんが上と言う場合、言う人の判断が評価ともなっています。判断は正反対になることも多いです。
裁判で有罪・無罪となるのが典型例です。不動産・株・その他品物の価格は正・誤入り混じった判断の結果が大勢を作って行きます。「大勢も小勢も共に真であり虚である」かもしれませんネ。
現在成立している価格から評価がなされる場合もあり、評価から価格が形成されて行く場合もあります。両者が殆ど同時に起こる場合も少ないとは言えません。因果は巡る関係です。このため往々にして頭が混乱します。
- 3. 「消費税」の影響は?
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国や地方の財政悪化が消費税アップの容認傾向を強めています。
税率が10%になれば3,000万円のマンションなら3,300万円近くになるでしょう。年間500万円の消費をする人はその他に50万円の追加消費税額となります。各種保険料も上昇します。可処分所得はベースアップが相当程度なければ減る一方です。
吸い上げられた税金や保険料が公共投資に向えば回り回って戻ってきますが、借金返済に使われたのではどうなるのでしょう?
国債や地方債を買っている人の大部分が機関投資家と言われる人達です。返済されたお金はより有利な投資先を求めて動くでしょう。
生産活動をする企業に貸付ければ良いのですが、企業の製品は可処分所得が減っている国民が買えません。
余ったお金は株・金・石油等に動くかも知れません。中国・インド等資金需要の活発な海外にシフトするかも知れません。そうなれば円安になり輸入物価は上がり、可処分所得は更に減るかも知れません。可処分所得が減れば住宅投資も減るかも知れません。そうなると不動産の価格は将来?
頑張って可処分所得を増やしましょう。
- 4. 「価格」の合理性・不合理性
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バブル崩壊後、ゴルフ場・厚生年金保養施設等格安の価格で処分されて来ました。値崩れしている時に「適正価格」議論をしても無駄でした。バブル期もそうでした。
ライブドアの株価も同じ動きをしました。USENの社長は1株75円・総額90億円で取得しました。その後10日も経たない内に1株125円・総額150億円になりました。ホリエモン社長逮捕の頃は650円位でした。経済学のミクロ理論の中心は「価格論」ですが、経済学部の必修科目に心理学が必要と感じられます。価格は理論で決まるどころか人間の心理で決まる様です。
学者・評論家・鑑定士・各種コンサルタント等が述べる「価格」の有効期間は極端な場合3日間程でしかありません。女心・秋の空以上に価格の変化は激しいものです。唯、価格の激変は短期間でその後は長期間安定傾向に入る性格を有します。従って「価格」感の乱れから勝ち組と負け組みが生まれるのは変動期です。公示価格等の公的価格は短期間の変動を長期間で調整して行く結果となっています。こうした目で見れば、価格も自己責任で判断し大本営発表に追随しない方がよいかも知れません。
- 5. 「競売」市場での価格
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裁判所を通じて「競売」に出される物件の売却状態が好調である。
債務者・債権者・執行官等関係人には喜ばしいことである。
最近の入札者は不動産業者が主体で一定の利益を乗せて転売されることが多い。そのプロセスを見ると、評価人が「基準価額」を示し、その8掛け価額が「入札可能価額」となっている。最終的に落札される価額は「入札可能価額」の2倍乃至3倍が主流となっているが、応札額の最低額との開きは大きい。即ち、プロやセミプロの価格感も倍半の開きがある。原因は不動産価額の見方に違いがあるのか、価額の見方は違いがなく転売期待利益額の違いがあるのか、これら双方が絡み合っているのか興味津々である。
好況下であれ不況下であれ事業者にとっては利益の確保は難しいものである。競売物件の現場にも足を運び価格分析に時間を費やし、落札できるのも100件に3件あれば良い方?
事情を知らない第三者は「右から左で儲かる」などと言うけれど・・・。
- 6. 「買う」と「借りる」はどちらが得?
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経済的には
「買う」代金は「借りる」賃料の一括前払い。
「借りる」賃料は「買う」代金の分割後払い。
です。
法律的には
「借りる」人は「貸す」人との関係が長く続く中で、権利関係に悩まされることも多々あります。「貸す」人も同じです。
法律的な問題を避ける観点からは「買う」方が得策と言えます。
尤も、バブル崩壊がまた来なければの話しですが・・・。
- 7. 不動産市場の習性
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マスコミ等でも報道されている様に大都市圏の一部地域での地価上昇は目を見張るものがあります。
東京都心部では前回のバブル時を超えた価格も出現しているとか・・・。
こうなるとまた最後のババをつかむ人が出て来るのが常。
交通事故も自然災害も戦災も世界中のどこかで必ず起きているのに「自分」にとっては非現実的なテレビニュースの世界の出来事。
一部の識者は「バブル前に戻っただけ。むしろ今までが下がり過ぎた。」
一部の識者は「漸く正常な状態になったのに、またバブル当時に逆戻りした。」
あなたはどちらを信じますか?
- 8. 異常な(?)状態が続いている日本経済
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近世日本での最も異常な状態は敗戦であったことは異論がない所でしょう。
その後異常な復活を遂げました。
復活を遂げた時点で第一次石油ショック。その直後の福田内閣は安定成長を宣言しました。
その安定過程で起こったバブル現象。その後は100兆円と言われる不良債権の処理が異常な不況を招来。異常な沈下を起こして漸く水面に顔を出したことで「いざなぎ」超えの異常な長期に亘る景気回復期間とか?その間の異常な低金利で調達された資金は国内では使われず中国に向かい周辺諸国の異常な経済発展に寄与し、反動で中国特需の神風が吹く。
日常のテレビ番組の内容が相変わらずなのも異常だが、個人生活の安定感の裏では常に異常事態が進行中。
足元の不動産価格にも異常事態が迫っているかも・・・。否、異常事態真只中かも!!
- 9. ガソリン価格と土地価格
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原油価格は1バレル何ドルが適正なのでしょうか。
ところで1バレルとは何リットルが御存知でしょうか。約160リットルです。
そこで1バレル160ドルだと丁度1リットル当たり1ドルです。1ドル≒110円とします。中東の油田で110円で買った原油をタンカーに積んで保険を掛け日本の港のタンクに保管して精製工場でガソリンにしてタンクローリーで全国のガソリンスタンドへ運び車の窓を拭いてもらって1リットル当たり約190円支払います。その中には消費税・道路特定財源となる税も入っています。資源の価値の方がそれを加工・運搬する労働・経営・設備の価値より高く評価されています。これでいいのでしょうか?
分譲地の価格も同じかも。坪当たり10万円の農地が住宅地になると坪当たり20万円になります。これでいいのでしょうか?
この結果、一部の人たちに富が集中し、世界で見れば1%の人達が40%の富を持ち、下位50%の人達が1%の富を持つことになりました。
これからも上位1%の人達がガソリン価格も土地価格も決めてくれるのでしょうか。
必ずしも鑑定評価書の発行が最善の解決策とは限りません。お気軽にご相談ください。